写真や動画の投稿を職業として行う利用者向けに、SNSプラットフォームの公式APIから取得したデータをもとに、アカウント運用の実績を分析するサービスを開発しました。投稿ごとの反応やフォロワーの推移を自動で取り込み、次の投稿を判断するための指標として整理して表示します。取得したデータは自社側に蓄積し、APIの呼び出し制限に左右されずに集計できる構成にしています。
- 非公式な取得手段を採らない
- プラットフォームが公開する正規のAPIだけでデータを取得しています。画面を機械的に読み取る手段は短期的には多くの項目を取れますが、規約違反によるアカウント停止が利用者側に及ぶ可能性があり、サービスの継続性そのものを賭けることになります。取れる項目の少なさは、事業を続けるための制約として受け入れた判断です。
- 取得と表示を切り離す
- 外部APIからの取り込みを定期処理として独立させ、画面の表示は自社に蓄積したデータだけを参照します。画面を開くたびにAPIを呼ぶ構成では、呼び出し制限に達した利用者から順に画面が壊れ、しかもそれが利用の多い顧客から起こります。取得側が止まっても閲覧を続けられることを優先しました。
- 過去のデータが自社に残る効果
- 取り込んだデータを自社側に保存する構成は、応答速度のためだけではありません。プラットフォーム側が遡って参照できる期間には限りがあるため、蓄積を続けるほど他社が後から再現できない長期の推移が手元に残ります。API依存の事業で独自性を積む数少ない経路です。
- 認証の有効期限を運用に織り込む
- プラットフォームの認証には有効期限があるため、更新の手続きを取り込みの仕組みに含めました。期限切れは利用者側からは「ある日データが増えなくなった」としか見えず、問い合わせを受けるまで運営が気づけません。運用者の手作業や気づきに頼らない形にしています。
- 指標を絞る判断
- 取得できる数値をすべて並べず、投稿の時間帯や形式ごとの反応など、次の投稿の判断に直結する切り口に限定しました。同じAPIを競合も使える以上、数値の網羅性では差がつきません。何を見せないかを決めることが、このジャンルでは設計の中心になります。
- 次の投稿を決めるための画面にする
- 投稿ごとの反応やフォロワーの推移を、実績の記録ではなく次の投稿を判断するための指標として整理しています。投稿を職業とする利用者にとって、分析は見て終わる資料ではなく行動の材料です。過去を振り返る画面と次を決める画面では、並べるべき数値も並べ方も変わります。
この種のシステムで検討する論点(想定例)
以下は同種の案件で一般的に検討する内容の整理であり、上記事例の詳細を示すものではありません。
他社プラットフォームの上に事業を築くリスクの捉え方
SNSの公式APIを基盤にするプロダクトは、取得できる項目や利用条件がプラットフォーム側の判断で変わるという前提から逃れられません。事業計画の段階で「APIから取得できなくなったら成り立たない機能」と「自社で蓄積したデータや独自の分析で価値を出せる機能」を分け、後者の比重を時間とともに高めていく方針を持つ方法があります。依存を完全になくすことはできなくても、独自の価値の割合を意識して育てることが、プラットフォームの変更に耐える事業の条件になります。
分析サービスの価値は「指標の選び方」で決まる
データを取得して表示するだけの機能は、競合も同じAPIを使える以上、差別化にはなりません。利用者がどのような判断を下したいのかを聞き取り、その判断に直結する指標だけを主役として見せる設計にすると、画面の分かりやすさとサービスの独自性が同時に生まれます。指標の選定はUXリサーチの対象であり、利用者の職業的な目標、たとえば企業案件の獲得や特定層への到達といった文脈から逆算して決めるべきものです。
使った技術・扱った領域
- 外部API連携
- データ可視化
- ダッシュボード
関連するサービス
関連する領域
関連するインサイト
- 外部API連携の設計と運用 — 認証・レート制限・仕様変更への備え決済・地図・メッセージ配信など外部APIとの連携は、つなぐだけでは終わりません。認証方式の考え方、レート制限とリトライ、冪等性、仕様変更や障害への備え、ログと監視、利用規約の確認まで、運用を見据えた設計の要点を整理します。
- AI時代に守れるものは何かAI機能は短期間で模倣されます。模倣されても残るのは、蓄積されるデータ、業務への食い込み、切り替えコストです。何が守れて何が守れないか、積み上がる設計の決め方を整理します。
- プロダクトのKPI設計とダッシュボード — 見るべき指標を絞る北極星指標を起点に先行指標・遅行指標へ分解し、PMF前後のフェーズに応じて見るKPIを絞る考え方と、意思決定に使えるダッシュボードの設計、計測の信頼性、やりがちな失敗を整理します。
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監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開