AIが向くのは「正解が一つに決まらない」「例示で説明したほうが早い」作業です。それ以外は、従来の仕組みのほうが安く、速く、説明しやすいことがあります。
1. やりたいことを、作業の単位まで分解する
「AIで業務を効率化したい」のままでは判断できません。まず、現在その業務を人がどう進めているかを、手順の単位に分解します。分解すると、AIに向く手順と、そうでない手順が混ざっていることがほとんどです。仕分けは手順ごとに行います。
- その業務は、今は誰が、どれくらいの頻度で行っているか
- 着手から完了までの手順を、5〜10個に分けて書き出す
- 各手順の入力(何を見て)と出力(何を作るか)を一行で書く
- 時間がかかっている手順、属人化している手順に印を付ける
2. 正解が一つに決まるかどうかで分ける
手順ごとに、出力の正解が一つに決まるかを判定します。決まるものは条件分岐や計算、検索で処理できます。決まらないもの、つまり「だいたい合っていればよい」「書き方は複数あってよい」種類の作業が、AIの候補になります。ここを混同すると、確実に処理できたはずのものを不確実にしてしまいます。
3. ルール・検索で足りないかを先に確かめる
AIの候補に残った手順についても、まず単純な手段で試します。キーワードの一致、簡単な条件分岐、既存のツールの機能で、求める品質の何割が達成できるかを見ます。ここで十分なら、運用費も説明の手間もかからない方法を選べます。足りないと分かって初めて、AIを使う理由が言葉にできます。
- キーワードや条件分岐だけで、どこまで処理できそうか
- すでに使っているツールに、同じことをする機能はないか
- 単純な手段で足りない理由を一文で書けるか(例: 表現の揺れが多く、条件を列挙しきれない)
4. 間違えたときに何が起きるかを書く
AIの出力は一定の割合で外れます。外れたときの影響が小さい用途から始めるのが原則です。影響が大きい用途は、人の確認を挟む形に設計し直すか、今回は見送ります。この判断を先にしておくと、後の設計で迷いません。
- 出力が間違っていた場合、誰が困るか(社内だけか、顧客に届くか)
- 間違いは後から取り返せるか(下書きなら直せる、送信済みなら直せない)
- 間違いに気づける仕組みがあるか(人が必ず見る工程を通るか)
- 影響が大きい場合、人の確認を挟む形に変えられるか
5. 使える材料が手元にあるかを確認する
AIの出力の質は、渡せる材料に大きく左右されます。社内に蓄積された文章や記録がどこにあり、機械が読める形になっているかを確認します。紙やスキャン画像しかない、担当者の頭の中にしかない、という場合は、材料を整えることが先の作業になります。
- 参照させたい資料はどこにあるか(ファイル、システム、紙)
- その資料は最新の状態が保たれているか。誰が更新しているか
- 良い出力の見本を10件ほど集められるか(過去の成果物で構いません)
- 渡してよい情報と、渡してはいけない情報の線引きは決まっているか
6. 効果を測る方法を先に決める
AIの導入は「使ってみた感想」で評価されがちです。作る前に、何が改善されれば成功と言えるかを決めます。時間短縮であれば現状の所要時間を先に測り、品質であれば現状のやり直し率を先に記録します。比較する元の数字がないと、後から効果を説明できません。
- 改善したいのは、時間か、品質か、対応できる件数か
- 現状の数字を、導入前に記録したか
- いつ時点の数字で判断するか(例: 運用開始から1か月後)
- 期待に届かなかったときに、改善するのか、やめるのかを決めてあるか
7. 仕分けの結果をまとめる
1〜6を踏まえて、手順ごとに扱いを決めます。全部をAIにする必要はありません。むしろ、通常のプログラムで処理する部分と、AIに任せる部分と、人が判断する部分が混ざった形が実務では多くなります。この表をそのまま開発の相談に持ち込めます。なお、AIを使う機能は利用量に応じた費用が継続して発生します。試算の方法は「AI機能のコスト試算シート」を参照してください。
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監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開