運用が止まる原因の多くは、技術の難しさではなく「その手順を知っている人がいない」ことです。書き残す範囲を決めるところから始めます。
この手順書が満たすべき条件
手順書は、書くことより読まれることが目的です。分厚い文書は更新されず、更新されない文書は信用されなくなり、結局また人の記憶に戻ります。判断の基準は一つで、「その業務を知らない人が、これを読んで実行できるか」です。実行できないなら、詳しさが足りないか、前提が省かれています。
1. システムの全体像(1ページ)
手順に入る前に、何が動いているかを一枚で示します。図でなくても構いません。何というサービスが、どこで動いていて、どこにデータがあるかが分かれば十分です。障害のとき、この一枚があるかないかで調査の速さが変わります。
2. 定期的に行う作業
毎日・毎週・毎月行う作業を、頻度ごとに並べます。作業には所要時間の目安を添えると、担当を割り振るときに使えます。自動化されている作業も、「自動で動いていること」と「どこで結果を確認するか」を書いておきます。自動化されたものほど、止まったときに気づかれにくいためです。
3. よくある依頼への対応手順
問い合わせや社内からの依頼のうち、繰り返し発生するものを手順化します。件数の多い順に3〜5件だけ書けば、日々の負担はかなり減ります。全部を網羅しようとせず、頻度の高いものから書き足していく進め方が続きます。各手順には、やってはいけないことも一行添えておきます。
4. 障害が起きたときの対応
障害対応で最も重要なのは、原因の特定より先に、状況の把握と連絡です。手順書には、気づいてから最初の30分に何をするかを書きます。原因究明の手順は状況によって変わりますが、最初の動き方は共通化できます。
5. 権限とアカウントの管理
退職や担当変更のときに問題になりやすいのがここです。誰がどのサービスにアクセスできるかを一覧にし、少なくとも半年に一度は見直します。特に、契約や支払いに使っているアカウントが個人名義になっていないかは、早い段階で確認してください。
6. バックアップと復旧
バックアップは「取れていること」より「戻せること」が重要です。取得の設定だけして、戻す手順を一度も試したことがない状態は珍しくありません。年に一度でよいので、実際に復旧を試し、その結果を手順書に書き残します。
7. 引き継ぎと見直し
手順書は書いた時点から古くなります。見直す機会を仕組みに組み込んでおくと、陳腐化を防げます。担当が替わるときは、新しい担当者に手順書だけを渡して実行してもらい、詰まった箇所を書き足すのが、最も確実な更新方法です。
関連するインサイト
- 少人数開発チームの体制設計 — 役割・採用・外部パートナーの使い分け小さなチームでプロダクトを作り続けるために必要な役割と兼務の考え方、採用と外部パートナーの使い分け、CI/CDや生成AIで人手を補う仕組みを、事業フェーズの変化とあわせて整理します。
- 開発の内製化ロードマップ — 外注から自社チームへ移行する手順外注に頼っていた開発を自社チームへ移す手順を、現状の棚卸し、最初に内製化する領域の選定、採用と技術顧問の活用、コードとドキュメントの引き継ぎ、並走期間、移行後の外部パートナーの使い方まで段階的に解説します。
- コンテナとクラウドの活用 — 小規模チームでの現実的な構成コンテナで環境差を解消し、マネージド実行環境・サーバーレス・PaaSから小規模チームに合う構成を選ぶ判断軸を整理します。IaCとCI/CD、監視・ログ・バックアップ、コスト管理まで実務の要点を解説します。
関連するサービス
監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開