運用が止まる原因の多くは、技術の難しさではなく「その手順を知っている人がいない」ことです。書き残す範囲を決めるところから始めます。
この手順書が満たすべき条件
手順書は、書くことより読まれることが目的です。分厚い文書は更新されず、更新されない文書は信用されなくなり、結局また人の記憶に戻ります。判断の基準は一つで、「その業務を知らない人が、これを読んで実行できるか」です。実行できないなら、詳しさが足りないか、前提が省かれています。
- 初めて担当する人が、読んで手を動かせるか
- 1件あたりの手順が一画面に収まる程度に短いか
- 最後に更新した日付と更新者が書いてあるか
- 置き場所が一つに決まっており、全員が知っているか
1. システムの全体像(1ページ)
手順に入る前に、何が動いているかを一枚で示します。図でなくても構いません。何というサービスが、どこで動いていて、どこにデータがあるかが分かれば十分です。障害のとき、この一枚があるかないかで調査の速さが変わります。
- 利用しているサービスの一覧(サーバー、データベース、外部サービス、ドメイン、メール送信)
- それぞれの契約名義と、管理画面のURL
- データがどこに保存されているか
- システム同士のつながり(どれが止まると何が止まるか)
2. 定期的に行う作業
毎日・毎週・毎月行う作業を、頻度ごとに並べます。作業には所要時間の目安を添えると、担当を割り振るときに使えます。自動化されている作業も、「自動で動いていること」と「どこで結果を確認するか」を書いておきます。自動化されたものほど、止まったときに気づかれにくいためです。
3. よくある依頼への対応手順
問い合わせや社内からの依頼のうち、繰り返し発生するものを手順化します。件数の多い順に3〜5件だけ書けば、日々の負担はかなり減ります。全部を網羅しようとせず、頻度の高いものから書き足していく進め方が続きます。各手順には、やってはいけないことも一行添えておきます。
- 依頼の内容(どういう連絡が来るか)
- 実行する手順(番号付きで、画面名まで書く)
- 完了したことをどう確認するか
- この手順でやってはいけないこと(例: 本番のデータを直接書き換えない)
- 判断に迷ったときの相談先
4. 障害が起きたときの対応
障害対応で最も重要なのは、原因の特定より先に、状況の把握と連絡です。手順書には、気づいてから最初の30分に何をするかを書きます。原因究明の手順は状況によって変わりますが、最初の動き方は共通化できます。
- 気づく経路(監視の通知、利用者からの連絡)ごとの受け口
- 最初に確認すること(どの機能が、いつから、どれくらいの利用者に影響しているか)
- 誰に、どの手段で連絡するか(社内、開発パートナー、利用者)
- 利用者への告知が必要な基準と、告知の文面のひな形
- 対応中の記録をどこに残すか
5. 権限とアカウントの管理
退職や担当変更のときに問題になりやすいのがここです。誰がどのサービスにアクセスできるかを一覧にし、少なくとも半年に一度は見直します。特に、契約や支払いに使っているアカウントが個人名義になっていないかは、早い段階で確認してください。
- サービスごとの契約名義(会社名義になっているか)
- 管理者権限を持っている人の一覧
- 共有アカウントの有無と、その必要性
- 担当が離れるときに、権限を外す手順
- 見直しの頻度と担当
6. バックアップと復旧
バックアップは「取れていること」より「戻せること」が重要です。取得の設定だけして、戻す手順を一度も試したことがない状態は珍しくありません。年に一度でよいので、実際に復旧を試し、その結果を手順書に書き残します。
- 何を、どの頻度で、どこに保存しているか
- どのくらい前まで戻せるか
- 復旧の手順(誰が、どの画面で、どう操作するか)
- 最後に復旧を試した日と、かかった時間
- 復旧の判断をするのは誰か
7. 引き継ぎと見直し
手順書は書いた時点から古くなります。見直す機会を仕組みに組み込んでおくと、陳腐化を防げます。担当が替わるときは、新しい担当者に手順書だけを渡して実行してもらい、詰まった箇所を書き足すのが、最も確実な更新方法です。
- 見直しの頻度(例: 四半期に一度)と担当
- システムを変更したときに、手順書も更新する取り決めがあるか
- 引き継ぎのとき、新しい担当者が手順書だけで実行できたか
- 詰まった箇所を、その場で書き足したか
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監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開