AI機能の費用は、開発費よりも「使われ続けたときの運用費」で効いてきます。当たったときに困らない試算を、作る前に置いておきます。
費用の構造を押さえる
AI機能の費用は、大きく三つに分かれます。作るときに一度かかる開発費、使うたびにかかる利用料、そして動かし続けるための運用費です。従来のシステムと違うのは二つ目で、利用が増えるほど費用も増えます。試算では、この利用料を中心に見ます。金額は提供元や条件によって変わり、案件によっても異なるため、ここでは考え方のみを扱います。
1回あたりの費用を出す
多くのAIサービスは、やり取りする文章の量に応じて課金されます。入力(こちらが渡す文章)と出力(返ってくる文章)で単価が違うのが一般的で、出力のほうが高いことが多くあります。まずは代表的な処理を一つ選び、実際に近い分量で試して、1回あたりの費用を実測します。推定より実測のほうが早く、確実です。
- 代表的な処理を一つ決める(例: 問い合わせ1件の下書きを作る)
- その処理で渡す文章の分量(指示文、参考資料、利用者の入力)
- 返ってくる文章の分量
- 1回の処理で何往復するか(やり直しや確認を含めると1回では終わらないことがあります)
- 実際に試したときの1回あたりの費用
月間の回数を見積もる
1回あたりの費用が出たら、月に何回実行されるかを掛けます。見落としやすいのは、利用者が操作した回数と、実際にAIが呼ばれる回数が一致しないことです。やり直し、下書きの作り直し、裏側での再試行、開発中の試行錯誤も回数に入ります。少なめに見積もると、請求が来てから驚くことになります。
- 想定する利用者数と、一人あたりの利用頻度
- 1回の利用でAIが呼ばれる回数(やり直し・再試行を含む)
- 開発とテストで消費する分
- 月間の合計回数 = 利用者数 × 頻度 × 1利用あたりの呼び出し回数
利用量が増えたときの影響を見る
試算の要点は、今の数字ではなく、伸びたときの数字です。現在の想定、その5倍、その10倍の3列で並べます。10倍の列を見て「この金額なら事業として成り立たない」と分かるなら、設計を変えるか、料金に転嫁するかを、作る前に決められます。想定より伸びるのは喜ばしいことなので、そのときに慌てない準備をしておきます。
費用を抑える手段を検討する
試算の結果が厳しい場合、使える手段はいくつかあります。どれも品質や開発の手間との引き換えになるため、効果の大きいものから順に検討します。最初から全部を実装する必要はありませんが、後から入れられる構造にしておくことは、設計時に開発パートナーへ伝えておきます。
- 同じ入力に対する結果を保存して再利用する(同じ質問が繰り返される用途では効果が大きい)
- 渡す資料を絞る(全文ではなく関連箇所だけを渡す)
- 処理の種類によってモデルを使い分ける(簡単な分類に高価なモデルを使わない)
- AIを呼ぶ前に、ルールや検索で処理できるものを振り分ける
- 1利用者あたりの上限回数を設ける
運用中に見る数字を決める
試算は外れます。大事なのは、外れたことに早く気づける状態にしておくことです。費用は日次で確認できるようにし、想定を超えたときに通知が来る設定を入れておきます。提供元のサービスには使用量の上限や予算アラートの機能があることが多いので、開発時に設定を依頼してください。
- 日次または週次で、利用料と処理回数を確認できるか
- 想定を超えたときに気づける通知が設定されているか
- 上限に達した場合、機能を止めるのか、簡易な処理に切り替えるのかを決めてあるか
- 処理回数が急増したとき、原因(利用増か、不具合による繰り返しか)を切り分けられるか
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監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開