監視の目的は、異常を全部拾うことではなく、「対応が必要なときだけ気づける」状態を作ることです。鳴りすぎる通知は、鳴らないのと同じになります。
1. 止まって困る機能を先に決める
すべてを同じ重さで監視することはできません。まず、止まると事業に影響する機能を3つほど挙げます。申込みが完了しない、ログインできない、決済が通らない、といった「そこが止まると売上か信用が傷む」機能です。監視の設計は、この3つから逆算します。
- 止まると売上が止まる機能はどれか
- 止まると顧客からの信用に関わる機能はどれか
- 何分止まったら問題と判断するか(機能ごとに違ってよい)
- 止まっていることに、今はどうやって気づいているか
2. 監視の四つの層を押さえる
監視には段階があります。外から見て動いているかを確認する層、システム内部のエラーを拾う層、資源の消費を見る層、そして事業の数字が普段と違わないかを見る層です。小さなチームでは、上の二つだけでも大きな効果があります。下の二つは、余力ができてから足します。
3. 外形監視を設定する
最も単純で、効果が大きいのが外形監視です。外部のサービスから定期的に自社の画面へアクセスし、正しく表示されるかを確認します。全体が落ちたときに確実に気づけるうえ、設定も簡単です。まだ入っていなければ、ここから始めてください。
- 監視する画面(トップページだけでなく、申込みやログインの画面も)
- 確認の間隔(例: 1分ごと)
- 何をもって異常と判断するか(応答がない、エラーが返る、応答が遅い)
- 何回続けて失敗したら通知するか(一時的な失敗で鳴らさないため)
- 証明書の有効期限やドメインの期限も監視対象に含めているか
4. エラー監視を設定する
外形監視は全体の停止に気づけますが、一部の機能だけが壊れている状態は拾えません。システム内部で発生したエラーを集める仕組みを入れ、発生した場所と内容が分かるようにします。エラーの内容に個人情報が含まれないよう、記録する項目には注意してください。
- エラーを集める仕組みが入っているか
- エラーの内容から、どの機能のどの処理かが分かるか
- 同じエラーがまとめて表示され、件数の推移が見られるか
- 記録される内容に、個人情報や認証情報が含まれていないか
- 新しい種類のエラーが出たときに通知されるか
5. 通知の宛先と手段を決める
通知先が「全員宛のメール」だと、誰も自分の担当だと思わず放置されます。誰が受け取り、誰が対応するかを決めます。時間帯によって扱いを変えることも検討します。夜間に鳴っても対応できないのであれば、夜間に鳴らす通知は本当に必要なものだけに絞ります。
- 通知を受け取る人(第一の担当と、代わりの担当)
- 通知の手段(チャット、メール、電話)と、緊急度による使い分け
- 営業時間外の扱い(誰が見るか、翌朝でよいものはどれか)
- 開発パートナーに通知が届く必要があるか。その範囲はどこまでか
- 通知を受けたら、何分以内に反応することにしているか
6. 鳴りすぎを防ぐ
監視が失敗する最も多い形は、止まることではなく、鳴りすぎて誰も見なくなることです。1週間の通知件数を数え、そのうち実際に対応が必要だったものの割合を見ます。対応不要の通知が大半を占めるなら、しきい値を見直すか、その通知を止めます。通知は減らしても構いません。
- 直近1週間の通知件数と、対応が必要だった件数
- 同じ原因で繰り返し鳴っている通知はないか
- 一時的な変動で鳴っている通知のしきい値を上げられないか
- 止めてよい通知を決めて、実際に止めたか
- この見直しを、どの頻度で行うか
7. 通知が来たあとの動きを決める
気づけても、その後どうするかが決まっていなければ意味がありません。通知の種類ごとに、最初に確認する場所と、次に取る行動を書いておきます。ここは運用手順書の障害対応の章とつながるので、同じ場所にまとめておくと探しやすくなります。
- 通知の種類ごとに、最初に見る画面はどこか
- 自社で対応できる範囲と、開発パートナーへ連絡する基準
- 利用者への告知が必要かどうかの判断基準
- 対応が終わったあと、原因と対処を記録する場所
- 同じことが起きないようにする対策を、誰がいつ検討するか
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監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開