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    シード期にAI機能を載せるべきか

    シード期のプロダクトにAI機能を入れるかどうかを、差別化になるのか検証には不要なのかで判断します。既製のAIサービスで足りる範囲、載せると検証が読みにくくなる理由、載せると決めた場合の最小構成を整理します。

    投資フェーズ別6分で読めます

    この記事の結論

    • 問いは「AIで差別化されるか」ではなく「AIがないと検証が成立しないか」です
    • 多くの構想では、AI機能がなくてもシード期の仮説は確かめられます
    • 載せると決めた場合も、既製のAIサービスをそのまま使う最小構成から始めます

    シード期の相談で頻繁に出てくるのが、「AI機能を入れるべきか」という問いです。投資家との会話でも話題になりやすく、入れないと遅れているように見えるのではないか、という不安も聞きます。

    この問いへの答えは、多くの場合「今は入れなくてよい」です。理由は、AIが役に立たないからではなく、シード期に確かめたいことがAIの有無で変わらないことが多いからです。本記事では、その判断の仕方と、入れると決めた場合の最小構成を整理します。

    なお、開発工程そのものに生成AIを使う話(設計やコードの生成、レビューの補助)は別の論点で、生成AIを開発工程に組み込むで扱っています。本記事は、プロダクトの機能としてのAIに絞ります。

    問いの立て方を変える

    「AI機能を載せると差別化されるか」という問いは、答えが出にくい問いです。載せれば何かしらの違いは生まれますし、載せなくても事業は成立します。どちらの結論も正当化できてしまいます。

    代わりに、次の問いを立ててください。

    AI機能がない状態で、シードで確かめたい仮説を確かめられるか。

    確かめられるなら、載せない判断が有力です。確かめられないなら、載せる理由があります。この問いなら、答えははっきりします。

    たとえば、「この業務を外部に任せたい人がいる」ことを確かめたいなら、任せた結果が人の手によるものかAIによるものかは、この段階の検証結果を左右しません。一方、「AIが出す精度でなければ価値が成立しない」という構想であれば、精度の確認は避けて通れません。

    載せない判断が有力なケース

    次のいずれかに当てはまるなら、シード期に載せない選択が合理的です。

    • AIが担う予定の処理を、当面は人が手でできる。件数が少ないうちは、人がやったほうが速く、品質も安定します。手でやった記録が、後でAIに任せるときの評価基準にもなります
    • AIがなくても利用者の行動が観察できる。検証の対象が「使い続けるか」であれば、処理の手段は問われません
    • 出力の誤りが業務に直結する。誤った結果がそのまま顧客に届くと、検証したい価値とは別の理由で評価が下がります
    • 入力するデータに個人情報や秘密情報が含まれる。扱いの設計に時間がかかるため、検証段階の優先度としては下がります

    特に一つ目は見落とされがちです。「将来的には自動化するので、最初から自動化しておこう」という判断は自然に見えますが、自動化すべき処理の中身は、手でやってみて初めて具体的になります。

    載せる理由があるケース

    逆に、次の場合は載せる意味があります。

    • AIの出力そのものが提供価値である。文章の生成、要約、分類といった処理の結果を顧客に届けることが価値の中心なら、それがないと検証になりません
    • 人手では成立しない量が前提。一件ずつ人がやると価格が成立しない構想なら、成立するかどうかを早く確かめる意味があります
    • 精度が出るかが最大の不確実性である。この場合、作るべきは製品ではなく、精度を確かめる小さな試行です。結果として「必要な精度が出ない」と分かれば、それも大きな成果です

    三つ目のケースは、プロダクトを作る前にできます。実際のデータに近いサンプルをいくつか用意して、既製のAIサービスに投げてみて、出てきた結果を人が評価する。この程度の確認で、方向性の可否はかなり判断できます。

    載せるなら、まず既製品をそのまま使う

    載せると決めた場合でも、最初から作り込まないことをおすすめします。現在は、OpenAI、Anthropic、Googleなどが提供するAPIをそのまま呼び出す形で、要約、分類、抽出、対話といった処理を実装できます。シード期に必要なのは、この範囲で足りるかを確かめることです。

    最小構成の目安は次のとおりです。

    1. 既製のAIサービスのAPIを、プロダクトから直接呼ぶ
    2. 指示文(プロンプト)はコード中に持ち、変更しやすくしておく
    3. 出力は人が確認できる形で表示し、修正できるようにする
    4. 利用回数と費用を記録し、上限に達したら止める仕組みを入れる
    5. 失敗したときに処理全体が止まらないようにする

    この構成であれば、比較的短い期間で作れます。逆に、独自の検索基盤や、出力の自動評価の仕組み、モデルの調整といった話に入ると、それ自体が一つの開発プロジェクトになります。シード期の検証としては重すぎることがほとんどです。

    一般論として、自社データを参照させる仕組み(いわゆるRAG)や、出力品質を自動で測る評価基盤は、AI機能が事業の中心になり、利用量が増えてから検討する領域です。その段階に至る前に基盤の議論から入ると、確かめるべき仮説への到達が遅れます。

    載せたあとに測るもの

    AI機能を入れたら、入れっぱなしにせず、次を観察してください。

    • 使われているか。搭載したAI機能の利用率は、想定より低いことがあります。使われていないなら、機能ではなく見せ方か、そもそもの必要性の問題です
    • 結果が採用されているか。生成された内容を利用者がそのまま使ったのか、大きく直したのか。直しが多いなら、価値は限定的です
    • 費用が予想の範囲か。利用量に比例するため、想定外の使われ方をすると費用が伸びます
    • AI機能を外しても残る価値は何か。この問いに答えられないなら、事業の軸がAI機能そのものになっている可能性があります

    三つ目について補足すると、費用の上限を設ける仕組みは、後から入れるより最初に入れるほうが簡単です。利用者ごとの回数制限や、月間の総量の上限を最初から設計に含めておいてください。

    データの扱いには先に線を引く

    AIサービスに何を送るかは、実装の問題ではなく事業の判断です。顧客の個人情報、未公開の事業情報、第三者から預かったデータをそのまま送ってよいかは、利用規約と自社の方針の両方で確認が必要です。

    シード期であっても、次の三点は先に決めてください。

    • 送ってよいデータと、送ってはいけないデータの区別
    • 利用するサービスの規約と、入力内容の学習利用に関する設定
    • 利用者に対して、AIを使っている旨をどう伝えるか

    三つ目は、業種によっては説明が求められる場合があります。個人情報や業種固有の規制に関わる内容は、スタートアップのセキュリティと個人情報保護もあわせてご覧いただき、個別の事案は専門家にご確認ください。

    判断を一文にする

    最後に、判断を一文で書いてみてください。「AI機能がないと、○○が確かめられないので載せる」または「AI機能がなくても○○は確かめられるので、今は載せない」。この一文が書けないうちは、まだ判断の材料が足りていません。

    AI機能を載せるかどうかの整理、既製のAIサービスで足りる範囲の見極めについては、AI活用開発のページとあわせてお問い合わせからご相談ください。効果が薄いと判断した場合は、その旨をお伝えします。

    本記事は一般的な情報であり、個別の事案は専門家にご確認ください。

    チェックリスト

    • AI機能がない状態で仮説を確かめられないか検討した
    • AIが担う処理を、人が手でやった場合の所要時間を出した
    • 出力が間違っていたときに何が起きるかを書き出した
    • 既製のAIサービスをそのまま使う構成で足りるか確かめた
    • 利用量に応じた費用が事業計画のどこに乗るか把握している
    • AI機能を外しても残る価値が何かを言える
    • 入力するデータに個人情報や秘密情報が含まれないか確認した

    よくあるご質問

    競合がAI機能を出してきたら、こちらも入れるべきですか

    機能の有無より、その機能が顧客の課題を実際に解いているかを見てください。AI機能を載せること自体は既製のサービスを使えば短期間で可能なため、それ自体は長く続く差にはなりにくい面があります。差になりやすいのは、その領域特有のデータの持ち方や業務の理解です。

    AIの出力が不正確な場合、どう扱えばよいですか

    誤りが起きる前提で、確認と修正の手順を設計します。人が最終確認する、確信度の低い場合は結果を出さない、元の情報へのリンクを併記するといった形です。誤りが業務上の損害につながる用途では、そもそも自動化の対象にしない判断も必要です。

    AI機能の費用はどのくらい見ておけばよいですか

    案件により大きく異なります。重要なのは、利用量に比例して費用が増える点です。想定する利用回数と、一回あたりの処理量から概算し、上限を設ける仕組みを最初から入れておくことをおすすめします。

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    監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開

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