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    クラウドインフラコストの圧縮 — 見直しの順番と落とし穴

    クラウドの利用料が事業の成長より速く増えているとき、どこから手を付けるべきか。可視化から監視の継続運用までの手順と、可用性や開発速度を損なう落とし穴を経営者向けに整理します。

    技術・インフラ6分で読めます

    この記事の結論

    • コスト削減は可視化とタグ付けから始め、内訳を説明できる状態を先に作ります
    • 停止・適正化・割引・構成見直しの順で、リスクの小さい施策から進めます
    • 一度きりの削減ではなく、監視とアラートで継続的に管理する仕組みが要です

    クラウドは使った分だけ課金されるため、事業の成長とともに利用料が増えるのは自然なことです。しかし、売上や利用者の伸びよりも速いペースでインフラ費用が膨らんでいるなら、構成や運用に無駄が潜んでいる可能性があります。

    本記事では、クラウドインフラのコストを見直す際の手順を順番に示し、削減を急ぐあまり陥りがちな落とし穴を整理します。どれだけ下がるかは案件により大きく異なりますが、「効果が大きく、リスクが小さいものから着手する」という順番の考え方は、どの規模の事業にも共通します。

    ステップ1:可視化とタグ付けで「何に使っているか」を把握する

    最初に取り組むべきは、削減ではなく把握です。請求書の合計額だけを見ていても、どのサービスが、どの環境(本番・検証・開発)が、どのプロダクトが費用を生んでいるのかは分かりません。

    具体的には、すべてのリソースに「環境」「プロダクト」「担当チーム」などのタグを付け、クラウド事業者が提供するコスト管理の画面でタグ別に集計できる状態を作ります。タグの付いていないリソースは「持ち主不明」として一覧化し、順に確認していきます。

    想定例:検証環境と本番環境が同じアカウントに混在しており、合計額しか見ていなかったケースを考えます。タグ付けをして環境別に集計してみると、検証環境が本番と同等の構成で常時稼働していることが分かり、次のステップでの見直し対象が明確になります。

    この段階で得られる「内訳を説明できる状態」は、以降のすべての施策の土台になります。

    ステップ2:使っていないリソースを止め、サイズを適正化する

    内訳が見えたら、次はリスクの小さい施策から着手します。

    1. 使っていないリソースの停止:誰も使っていない検証用サーバー、削除したはずのサービスに紐づいたままのストレージ、参照されていないスナップショットや古いバックアップ、停止したサーバーに残っている固定IPなどが典型です。
    2. 稼働時間の見直し:開発環境や検証環境は、業務時間外や休日に止めても支障がないことが多く、スケジュールによる自動停止と起動を設定します。
    3. サイズの適正化:CPUやメモリの実際の使用率を一定の期間観測し、余裕が大きすぎるサーバーやデータベースを一段小さい構成に変更します。逆に、限界近くで動いているものは増強の候補です。

    ここで大切なのは、削除の前に「本当に使っていないか」を確かめることです。月に一度だけ動くバッチや、障害時にのみ使う待機系など、普段は静かに見えて実は必要なものがあります。停止してしばらく様子を見てから削除する、という二段階の運用が安全です。

    ステップ3:予約・割引の仕組みを活用する

    構成が落ち着いたら、安定して使い続けるリソースに対して、クラウド事業者が用意している長期利用の割引を検討します。多くの事業者は、一定期間の利用を約束する代わりに単価を下げる仕組みを提供しています。

    順番が重要な理由は、適正化の前に予約してしまうと、不要になった大きさのリソースに対して約束が残るためです。まず必要な構成を確定し、そのうえで「今後も確実に使う分」だけを予約の対象にします。

    また、負荷の変動が大きい処理や、中断されても再実行できるバッチには、空き容量を安価に使える仕組みが向いている場合があります。用途ごとに向き不向きがあるため、可用性の要件と照らし合わせて選びます。

    ステップ4:アーキテクチャそのものを見直す

    停止・適正化・割引で得られる効果が頭打ちになったら、構成の見直しを検討します。ここからは変更の範囲が広くなるため、効果と工数を見比べて判断します。

    • サーバーレス:アクセスが断続的なAPIやバッチは、常時稼働のサーバーではなく、実行した分だけ課金される仕組みに載せ替えることで、待機時間の費用をなくせます。
    • コンテナ化:複数の小さなサービスをそれぞれ専用サーバーで動かしている場合、コンテナにまとめて同じ基盤で動かすことで、サーバーの空き容量を有効に使えます。
    • ストレージの階層化:アクセス頻度の低いデータを、低価格の保存領域へ自動的に移す設定にします。
    • マネージドサービスの活用:自前で運用しているデータベースやキューを事業者の管理サービスに置き換えると、サーバー費用だけでなく運用の手間も減ることがあります。

    想定例:夜間に集計処理を行うためだけに常時稼働しているサーバーがあるとします。この処理をサーバーレスの実行基盤に移すと、処理が動いているあいだだけ費用が発生する形になり、日中の待機分がなくなります。ただし、実行時間の上限やメモリの制約があるため、事前の検証が必要です。

    構成の見直しは、費用だけでなく開発体験や運用のしやすさにも影響します。モダナイズ・リプレイスと合わせて検討するのが自然な流れです。

    ステップ5:監視とアラートで継続的に管理する

    コスト削減は一度やって終わりではありません。新しい機能が増え、チームのメンバーが入れ替わるうちに、また無駄が生まれます。継続的に管理するために、次の仕組みを整えます。

    • 予算アラート:想定を超える利用料が見込まれる時点で通知が届くよう設定します。月末の請求で初めて気づく状態を避けるためです。
    • 異常検知:前日や前週と比べて急に増えたサービスを検知し、原因を確認する運用にします。
    • 定期的なレビュー:タグ別の集計を定期的に確認し、持ち主不明のリソースや使用率の低いサーバーを洗い出す時間を持ちます。
    • 変更のコード化:インフラの構成をIaC(Infrastructure as Code:インフラ構成をコードとして管理する手法)で記述し、変更が履歴として残る状態にします。

    サーバーインフラ整備では、こうした継続運用の仕組みまで含めて設計することを重視しています。

    陥りやすい落とし穴

    削減を急ぐと、費用以外のものを失うことがあります。代表的な落とし穴を挙げます。

    落とし穴何が起きるか避け方
    可用性を落とす冗長構成を外して障害時に復旧できない要件を確認し、冗長性の削減は最後に検討する
    開発速度を犠牲にする検証環境を減らしすぎて開発が滞る自動停止で稼働時間を減らし、環境の数は維持する
    転送料・ログ費の見落としサーバー代は下がったが、通信やログ保存の費用が増える内訳全体を見て、転送量とログの保持期間も設計に含める
    手作業での変更誰が何を変えたか分からず、元に戻せないIaCで管理し、レビューを経て変更する

    とくに転送料とログ費は見落とされがちです。データを別の地域や外部へ送る通信、監視のために大量に出力されるログ、長期間保持しているアクセスログなどは、サーバー本体とは別の項目として積み上がります。サーバー代だけを見て判断すると、全体としては下がっていないということが起こります。

    リスクの小さい順に、続けて見直す

    クラウドインフラのコスト圧縮は、可視化とタグ付けで内訳を把握することから始まり、停止と適正化、予約・割引の活用、アーキテクチャの見直しへと、リスクの小さい順に進めるのが基本です。そして、監視とアラートによる継続運用がなければ、削減の効果は時間とともに薄れていきます。

    削減の余地は案件により大きく異なりますので、自社の構成でどこから着手すべきか整理したい場合は、お問い合わせからご相談ください。現状の請求内訳をもとに、見直しの順番を一緒に検討します。

    チェックリスト

    • 請求の内訳をサービス別・環境別・プロダクト別に説明できる
    • 使われていないリソースを定期的に洗い出す仕組みがある
    • 実際の使用率に対してサーバーの性能が過剰になっていないか確認している
    • 安定稼働している部分に予約や割引を適用できるか検討した
    • データ転送料やログ・監視の費用を見落としていない
    • インフラの変更がコードで管理され、履歴が残る状態になっている
    • 想定を超えた利用料を検知するアラートが設定されている

    よくあるご質問

    コスト削減はどこから手を付ければよいですか

    まず利用料の内訳を可視化し、何に使っているかを把握することが出発点です。可視化ができていない状態で個別の施策を打っても効果の確認ができず、削減が進んだかどうかも判断できません。

    サーバーを小さくすると障害が増えませんか

    適正化は稼働状況の実測にもとづいて行い、ピーク時の負荷や冗長構成を確認したうえで段階的に進めれば、可用性を保ちながら実施できます。急に大きく縮めるのではなく、監視を見ながら調整するのが基本です。

    アーキテクチャの見直しまで必要ですか

    案件により大きく異なります。停止や適正化だけで十分な場合もあれば、サーバーレスやコンテナへの移行で構造的に費用が下がる場合もあります。まず手軽な施策から着手し、効果が頭打ちになった段階で構成の見直しを検討するのが現実的です。

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    監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開

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