RFPの目的は、体裁を整えることではなく、複数の提案を同じ土俵で比べられるようにすることです。
なぜ数枚でよいのか
分厚いRFPは、要件が固まっている前提で書かれます。仮説を検証しながら進める段階では、細かく書き込むほど、後で変えにくくなります。一方、口頭だけで相談すると、会社ごとに聞いた内容が違うため、提案を比べられません。必要なのは、目的・範囲・制約・進め方・選び方の5点が同じ文面で全社に渡ることです。A4で3〜5枚に収まれば十分です。
1. 背景と目的
自社が何をしている会社で、今どんな状況にあり、この開発で何を実現したいかを書きます。事業の説明は3〜4文で足ります。重要なのは「なぜ今か」です。調達の予定、既存業務の限界、契約の更新時期など、期日の背景を書くと、相手は進め方を含めた提案ができます。事業の機密に触れる部分は、提案依頼の段階では丸める判断でかまいません。
2. 依頼したい範囲
作ってほしいものを、利用者の操作の流れで書きます。加えて「今回は依頼しない範囲」を明示します。設計だけを依頼するのか、開発と運用まで含めるのか、デザインは自社で用意するのかも、ここで区切ります。範囲が曖昧なまま見積りを集めると、金額の差が範囲の差なのか単価の差なのか分からなくなります。迷う作業は、どちらが担当するかを明記しておくのが確実です。
3. 制約と前提
期日、予算の考え方、既存システムとの関係、社内の体制を書きます。予算を伏せるかどうかは判断が分かれますが、上限や「この範囲で何ができるかを知りたい」という趣旨を書いたほうが、実現性のある提案が集まります。費用は範囲と体制によって案件ごとに異なるため、金額だけを並べて比べても意味がありません。また、社内に技術を判断できる人がいない場合は、そのことも正直に書いてください。支援の前提が変わります。
4. 提案してほしいこと
何を書いて返してほしいかを指定します。ここを指定しないと、会社ごとにフォーマットが違い、比較に時間がかかります。あわせて「提案は数枚で構いません」と添えると、相手も準備の負担が読めます。技術的な選択については、結論だけでなく理由を書いてもらうよう依頼してください。理由を自社が理解できる言葉で説明できるかは、重要な判断材料になります。
5. 選定の進め方と基準
いつまでに提案がほしいか、いつ決めるか、何を基準に選ぶかを書きます。基準を先に開示すると、相手はそこに向けた提案をしてきます。これは誘導ではなく、認識を揃える行為です。質問の受付期間と窓口も必ず書いてください。質問が来ない提案依頼は、相手が真剣に検討していないか、こちらの書き方が閉じているかのどちらかです。
6. 渡す前の確認
全社に同じ文面を渡せているか、機密の扱いをどうするかを確認します。事業の詳細を含む場合は、秘密保持の取り決めを先に交わすか、資料の粒度を調整します。また、社内で「この提案依頼の内容でよい」と合意が取れているかを確認してください。渡した後に前提が変わると、相手の工数を無駄にし、信頼も損なわれます。声をかける社数は、丁寧に読み比べられる範囲に留めるのが現実的です。
7. 提案を受け取ってからの読み方
金額の安さではなく、前提の違いを読んでください。安い提案は、範囲が狭いか、見込んでいる作業が少ないかのどちらかです。「含まれない作業」の欄を最初に読み比べると、実質的な差が見えます。また、こちらの依頼内容に対して「この部分は要らないのでは」「この順番のほうがよい」と指摘してくる提案は、内容を読み込んでいる証拠として評価できます。
8. 断り方も決めておく
選ばなかった会社への連絡は、必ず行ってください。理由は簡潔で構いませんが、伝えることで関係が残ります。ベンチャーの開発は一度で終わらないことが多く、今回合わなかった相手が次の案件で最適ということも起こります。あわせて、提案資料の扱い(返却・破棄・保管)についても、依頼時に決めておくと誠実です。提案には相手の時間が入っていることを忘れずに扱ってください。
関連するインサイト
- 開発パートナーの選び方|4つの選択肢の違いスタートアップがプロダクト開発の依頼先を選ぶときの判断軸を整理します。大手SIer、Web制作会社、フリーランス、小規模開発会社、内製を資金調達フェーズと速度の観点で比較し、契約前に確認したい質問と内製化への移行を解説します。
- アジャイル開発と契約 — 準委任で進める場合の合意事項アジャイル開発と請負契約の相性、準委任契約で進める理由、目的とスコープ・体制・検収・変更・知的財産権・中途終了など事前に合意すべき事項と発注側の責務を、発注者の視点で整理します。
- MVP開発の費用相場 — 内訳と相見積もりの比べ方MVP開発の費用相場を公開されている調査・記事の数値から出典付きで整理し、見積の内訳の読み方、相見積もりの比べ方、契約形態と費用の関係を解説します。自社の価格ではなく判断の軸を提供します。
関連するサービス
監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開