この記事の結論
- 公開されている相場は発注先の種類と規模で大きく幅があり、金額単体では比較できない
- 見積は総額ではなく作業項目ごとの工数と単価、実費に分けて読む
- 相見積もりは同じ範囲定義で依頼し、抜けている項目と契約形態を揃えて比べる
MVPの開発を外部に依頼しようとすると、最初に気になるのが「いくらかかるのか」です。しかし、公開されている相場を見ても、発注先や規模によって数倍の幅があり、そのままでは判断の材料になりません。本記事では、公開されている調査・記事の数値を出典付きで整理したうえで、見積の内訳の読み方、相見積もりの比べ方、契約形態と費用の関係を解説します。弊社の価格は本記事には書きません。弊社の見積の構成は料金の考え方をご覧ください。
一般的な情報であり、個別の事案は専門家・所管官庁にご確認ください。
公開されている相場の整理
まず、公開されている数値を並べます。いずれも他社の記事にもとづく一般的な目安で、弊社の価格ではありません。
発注先の種類によって、同じものを作っても金額の桁が変わります。大手SIer、中小の受託開発会社、フリーランスの順に高くなるのが一般的です。ただしこの差は、そのまま「割高・割安」を意味しません。大手の金額には管理部門やプロジェクト管理、品質保証の体制が含まれ、フリーランスの金額には一人の稼働分しか含まれないという、含まれるものの違いがあります。
数字だけを並べて比べると、この構造の違いが見えなくなります。金額の差が何の差なのかを確かめないまま安いほうを選ぶと、進行管理や検証を自社で負うことになり、結局は社内の工数として跳ね返ります。
規模別の目安としては、デジタル化の窓の記事が、システムの種類ごとの相場を挙げています。小規模なWebシステムで50〜300万円、業務システムやアプリで300〜1,000万円、大規模な基幹システムで1,000万円以上、という3段階です。
この分け方から読み取れるのは、相場が「発注先の種類」ではなく「何を作るか」で決まっているということです。同じ会社に頼んでも、作るものが変われば金額は桁で変わります。だから相見積もりで比べるときは、各社が前提としている範囲を揃えないと、金額の比較そのものが成り立ちません。
また、WUR の解説記事では、スタートアップが利用できる補助金の例が紹介されています。制度は年度ごとに公募要領が変わるため、利用を検討する場合は最新の情報を確認してください。
相場が数倍ぶれる理由
相場の幅が大きい理由は、主に三つあります。
- 範囲の違い: 同じ「MVP」でも、ログインと一覧だけのものから、決済や外部連携を含むものまで幅があります
- 含まれる作業の違い: 設計、デザイン、テスト、インフラ構築、リリース作業、保守を含むかどうかで総額は変わります
- 体制の違い: 経験のあるエンジニアが少人数で作るのか、管理者を含む複数人の体制で作るのかで、工数と単価の両方が変わります
想定例:あるスタートアップが三社に見積を依頼し、総額に三倍の差が出たとします。内訳を見ると、最も安い見積には設計とテストの項目がなく、最も高い見積にはプロジェクト管理と三か月の保守が含まれていました。総額だけを見れば判断を誤りますが、項目を揃えて比べると差の理由がはっきりします。
見積の内訳の読み方
見積書は総額ではなく、次の三つの要素に分けて読みます。
| 要素 | 見るべき点 |
|---|---|
| 工数 | 作業項目ごとに時間が書かれているか。設計・実装・テスト・インフラ・移行・ドキュメントが漏れなく含まれているか |
| 単価 | 工数の単位(時間・日・月)と単価が明記されているか。担当者の役割ごとに単価が異なるか |
| 実費 | クラウド費用、ドメイン、外部サービスやAIサービスの利用料など、第三者への支払いが分けて書かれているか |
作業項目ごとの工数が見えれば、「この機能を後回しにすればいくら減るか」を発注側が判断できます。逆に「一式」とだけ書かれた見積は、範囲を削る交渉ができません。内訳の記載を依頼して断られる場合は、その理由を確認してください。
また、リリース後の費用も見積の一部として考えます。クラウドの月額費用、保守や改善の稼働、外部サービスの従量課金は、初期費用とは別に毎月かかります。初期費用が安くても、運用費用が高い構成になっていないかを確認します。
工数
設計・実装・テスト・インフラ・移行・ドキュメントが作業項目ごとに書かれているか
単価
工数の単位(時間・日・月)と単価が明記され、役割ごとに分かれているか
実費
クラウド費用、ドメイン、外部サービスの利用料など第三者への支払いが分けて書かれているか
相見積もりの比べ方
複数の会社から見積を取る場合、比較を成り立たせるための準備が発注側に必要です。
- 範囲を文書にする: 検証したい仮説、最初のユーザー、必須の機能、後回しにする機能を一枚にまとめ、全社に同じものを渡します
- 契約形態を揃える: 準委任契約の月額と、請負契約の総額は直接比べられません。どちらで見積もるかを指定するか、両方を依頼します
- 抜けている項目を探す: 設計、テスト、インフラ、リリース作業、ドキュメント、保守が含まれているかを表にして確認します
- 安い理由と高い理由を聞く: 差の理由を説明してもらい、納得できるかで判断します。説明されない安さは、後から追加費用になりやすい部分です
- 仕様変更の扱いを確認する: MVPは作りながら変わるものです。変更時に費用がどう決まるかが契約に書かれているかを見ます
金額の比較と同じくらい大切なのが、提案の中身です。発注側が書いた機能一覧をそのまま見積もる会社と、「この機能は検証に不要ではないか」と提案してくる会社では、同じ金額でも得られるものが違います。開発会社の選び方は開発パートナーの選び方でも解説しています。
契約形態と費用の関係
費用の決まり方は契約形態によって変わります。請負契約では、範囲と検収条件を確定して総額を決めます。範囲が明確な作業では予算管理がしやすい一方、MVPのように要件が動く開発では、変更のたびに範囲と費用を合意し直す必要があり、かえって遅くなることがあります。
準委任契約では、月ごとの稼働時間に対して費用を支払い、その範囲で優先順位を入れ替えながら進めます。総額は事前に確定しませんが、稼働時間の上限を決めておけば、費用の見通しを保ちながら柔軟に進められます。仮説検証の段階では、この形が多く選ばれます。
どちらが適しているかは、要件の固まり具合で決まります。相場の数値は「範囲を固定した請負」を前提に語られることが多いため、準委任で進める場合は、月額と期間の見通しで考える必要があります。契約の考え方はアジャイル開発と契約で詳しく解説しています。
チェックリスト
- 検証したい仮説と最小限の機能範囲を文書にしてから見積を依頼したか
- 見積書に作業項目ごとの工数と単価、実費の内訳が記載されているか
- 設計、テスト、インフラ構築、リリース後の保守が含まれているかを確認したか
- 複数の見積を同じ範囲定義と同じ契約形態で比べているか
- 安い見積の理由(範囲の抜け、担当者の経験、体制)を説明してもらったか
- 仕様変更時の扱いと追加費用の決め方が契約に書かれているか
よくあるご質問
相場より安い見積は避けるべきですか
安さ自体は問題ではありません。範囲の抜け、テストや保守の除外、担当者の経験など、安い理由を説明してもらい、納得できるかで判断します。理由が説明されない場合は注意が必要です。
MVPの費用を抑える最も効果的な方法は何ですか
作る機能を減らすことです。検証に必須の機能だけに絞り、既存サービスやノーコードで代替できる部分は作らない判断が、単価の交渉より大きく効きます。
補助金は使えますか
制度によってはシステム開発費が対象になる場合があります。公募時期や要件は年度ごとに変わるため、最新の公募要領を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。
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監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開