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    AI活用に必要な社内スキル

    AI活用に必要なのは機械学習の専門家ではなく、業務を工程に分解できる人です。誰を採用し、誰を育て、何を外部に任せるかを、CTOのいない組織向けに整理します。

    AI活用6分で読めます

    この記事の結論

    • 必要なのは機械学習の専門家より、業務を工程に分解できる人です
    • この役割は既存社員の育成で埋まることが多く、採用より先に検討する価値があります
    • 社内に残すのは判断と業務知識、外部に任せるのは実装と運用設計です

    AI活用を検討する企業から、「AI人材を採用すべきか」という相談をよくいただきます。求人票を用意し、機械学習の経験者を探し始めるのですが、採用は難航し、採用できても期待した成果につながらない、という話も聞きます。

    原因の多くは、必要なスキルの見立てがずれていることにあります。既製のAIサービスを組み込んで業務やプロダクトに活かす場合、必要なのはモデルを作る能力ではありません。本記事では、実際に必要なスキルと、採用・育成・外部委託の切り分けを整理します。

    本当に必要なのは、業務を分解できる人

    AI活用がうまくいかない場面を観察すると、技術ではなく設計の段階でつまずいていることがほとんどです。「問い合わせ対応をAIで効率化したい」という依頼はあっても、その業務が実際にどのような工程でできているかが誰にも説明できない、という状態です。

    問い合わせ対応を分解すれば、受信、内容の分類、過去の類似案件の確認、回答の下書き、社内の確認、送信、記録という工程に分かれます。このうちAIに向くのは分類と下書きで、社内の確認は人が担うべき、という判断は、工程が見えて初めてできます。

    この分解ができる人が、AI活用の中心に必要な人材です。求められるのは次の三つです。

    • 業務の工程を、誰が見ても同じように理解できる粒度で書き出せる
    • 各工程で何が正解かを、感覚ではなく条件として言える
    • 例外がどのくらいの頻度で起きるか、例外が起きたときに何が困るかを知っている

    この三つを満たすのは、多くの場合その業務を実際にこなしてきた人です。外部から採用した専門家が持っていないのは、まさにこの部分です。

    出力の良し悪しを判定できる人

    もう一つ、社内に必要な役割があります。AIの出力が業務で使える水準かどうかを判定する人です。

    この判定を外部に任せると、品質の基準が定まりません。開発会社は「指示どおりに動いています」としか言えず、実際の業務で使えるかどうかは判断できないからです。判定は、業務の責任を持つ側にしかできません。

    判定する人に求められるのは、次のような働きです。

    • 実際の業務で起きる入力を使って試す
    • 出力が使えなかったときに、何が足りなかったかを言葉にする
    • 「だいたい合っている」ではなく、どの条件を満たせば採用かを文章にする
    • 誤った出力が業務に与える影響の大きさを見積もる

    最後の点は特に重要です。誤りが一目で分かる用途と、誤りに気づかないまま業務が進む用途では、必要な精度も人の確認の入れ方もまったく異なります。この判断は、業務を知っている人にしかできません。

    採用より先に、育成を検討する

    ここまでの二つの役割は、いずれも業務知識が土台にあります。つまり、社内にすでにいる人のほうが向いています。

    育成として必要なのは、次のような理解です。

    • AIが何を得意とし、何を苦手とするか(この点は社内のAIへの期待をどう調整するかで詳しく扱っています)
    • 出力が確率的に揺れるものであり、同じ入力でも毎回同じ結果とは限らないこと
    • 渡してよいデータと渡してはいけないデータの区別
    • 試した結果を記録し、比較する習慣

    これらは数か月の研修が必要なものではありません。実際の業務を題材に、既製のAIサービスを触りながら数週間試すほうが、座学より早く身につきます。

    その際、業務時間として試す時間を確保することが前提です。通常業務の合間にという形にすると、結局試されないまま終わります。担当を決め、週に何時間と決めるだけで進み方が変わります。

    想定例として、業務担当者が自分の業務の一工程を題材に、既製のAIサービスで一か月試した場面を考えます。最初の二週間は期待どおりに動かず、指示の書き方を何度も直すことになります。しかしその過程で、「この工程は条件が多すぎてAIには向かない」「この工程は下書きさえ出れば十分」という判別ができるようになります。この判別こそが、外部に開発を依頼するときの要件になります。研修よりも、こうした実地の試行のほうが確実です。

    外部に任せる範囲

    社内に残すものと外部に任せるものを線引きすると、次のようになります。

    領域社内外部
    業務の分解◎ 社内でしかできない支援は可能
    出力の判定基準◎ 社内で決める基準の作り方は支援できる
    実装体制があれば○ 任せやすい
    運用設計(費用・監視・失敗時の対応)方針は社内○ 設計は任せやすい
    データの扱いのルール◎ 社内の方針として決める助言は可能
    継続的な改善◎ 判定は社内反映作業は任せやすい

    この線引きの原則は、「判断は社内、作業は外部」です。判断まで外部に委ねると、出来上がったものが業務に合わず、直すたびに費用がかかる構造になります。

    内製化を進める順序については開発の内製化ロードマップ、少人数での体制設計については少人数開発チームの体制設計もあわせてご覧ください。

    採用が必要になる場面

    育成で埋まらず、採用を検討すべき場面もあります。

    • AI機能が事業の中核で、継続的に改善し続ける必要がある
    • 扱うデータの量や機密性が高く、外部に委ねられない部分が多い
    • 開発そのものを内製に移す方針が決まっている

    これらに当てはまる場合でも、探すべきは「機械学習の研究者」ではなく、「Webアプリケーションを作れて、外部APIとの連携や運用設計の経験がある人」です。既製のAIサービスを組み込む構成では、必要なのは通常のWeb開発の力量に、AI特有の注意点(出力の揺れ、費用の変動、失敗時の代替手段)への理解が加わったものです。この条件のほうが採用の難易度も下がります。

    弊社は既製のAIサービスを組み込む立場であり、モデルを学習させる研究開発は専門としていません。そのため人材の話でも、モデルを作れる人を探すことはおすすめせず、業務を分解できる人を社内に確保することをお伝えしています。体制づくりそのものは開発チーム構築支援で扱っています。

    業務を知っている人が中心にいるか

    AI活用に必要なスキルは、モデルを作る力ではなく、業務を工程に分解する力と、出力の良し悪しを業務基準で判定する力です。どちらも業務知識が土台にあるため、外部から採用するより社内で育てるほうが確実です。実装と運用設計は外部に任せられますが、分解と判定は社内に残してください。

    誰に何を任せるべきか整理したい方は、お問い合わせからご相談ください。オンラインで状況を伺います。ご相談・お見積りは無料です。

    チェックリスト

    • AIで解きたい業務を工程単位で書き出せる人がいるか
    • 出力の良し悪しを業務基準で判定できる人を決めたか
    • 判定の基準が個人の感覚ではなく文章になっているか
    • 社内で試す時間が業務時間として確保されているか
    • 外部に任せる範囲と社内に残す範囲を線引きしたか
    • 採用を検討する前に育成で埋まるか確認したか

    よくあるご質問

    AI人材を採用すべきでしょうか?

    機械学習の研究開発を事業の中核に置く場合を除き、優先度は高くありません。既製のAIサービスを組み込む構成では、業務を分解できる人と、通常のWeb開発ができる人がいれば進みます。採用を検討する前に、社内の誰が業務を分解できるかを確認してください。

    エンジニアがいない会社でも進められますか?

    業務の分解と出力の判定は、エンジニアでなくてもできます。実装と運用設計は外部に任せる形で進めることは可能です。ただし、判定を外部に丸投げすると品質の基準が定まらないため、その部分は社内に残す必要があります。

    プロンプトの書き方を学ぶ研修は有効ですか?

    入口としては有効ですが、それだけでは足りません。書き方より、何を書くべきかを決めるための業務理解のほうが成果を左右します。研修を入れるなら、自社の実際の業務を題材にする形をおすすめします。

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    監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開

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