調査で見られているのは、技術が優れているかどうかより、自社が自社のシステムを把握しているかどうかです。
調査で見られていること
技術面の調査は、粗探しではなく、投資や買収の判断に必要なリスクを洗い出す作業です。問題が見つかること自体が致命的とは限らず、把握していて対処の方針を持っているかが評価されます。逆に、把握していない領域があると、その周辺すべてが不確実と見なされます。この資料では、把握の状態を自己点検します。
- 事業の継続性を脅かす要素がないか(人・権利・依存先)
- 投資後の計画が、現在の状態から実行可能か
- 隠れた負債(作り直しの必要性、未払いの技術的な借り)の規模
- 説明と実態が一致しているか
1. 事前に用意しておく資料
調査が始まってから作り始めると、事業の手が止まります。以下は、平時から更新しておくと負担が小さい資料です。分量は多くなくて構いません。最新であることのほうが重要です。
- システム構成図(1枚。利用者・サーバー・データ・外部サービスの関係)
- 使用技術の一覧(言語、フレームワーク、クラウド、主要な外部サービス)
- 開発メンバーの一覧と担当領域(社員・業務委託の別を含む)
- 外部サービスと外注先の契約一覧(契約期間と更新条件)
- 個人情報の項目と保存場所の一覧
- 直近1年の障害記録と対応内容
2. 権利関係の確認
この領域は、調査で指摘されると解決に時間がかかり、条件に影響しやすい部分です。関係者が退職・契約終了している場合、遡っての整理がさらに難しくなるため、早めの確認をおすすめします。
- ソースコードの権利が自社に帰属することを、契約書で確認できるか
- デザインデータ、文章、画像、フォントの利用範囲が契約内に収まっているか
- 業務委託・副業メンバーとの成果物と秘密保持の取り決めがあるか
- オープンソースのライセンスを一覧化し、条件を満たしているか
- 他社のサービスやAPIの利用規約に反する使い方をしていないか
3. 人への依存の説明
小さなチームで一人に集中していること自体は、この規模では自然なことです。問題になるのは、その事実を把握していない場合と、離脱したときの備えがない場合です。正直に現状を示し、備えの計画を添えるほうが評価されます。
- 領域ごとに、触れる人が何人いるか
- 一人しか触れない領域について、資料や手順が残っているか
- 主要メンバーの契約形態と、継続の見通し
- 離脱が起きた場合に、どれくらいの期間で引き継げる想定か
4. データと個人情報の扱い
取り扱う情報の性質によって、求められる説明の深さは変わります。医療、金融、子どもに関する情報などを扱う場合は、該当する規制への対応状況も併せて確認されます。まずは、自社がどの情報をどこに持っているかを正確に言える状態を作ります。
- 取得している情報の項目と、その取得目的が一致しているか
- 保存場所(自社の環境か、外部サービスか、国内か国外か)
- アクセスできる人の範囲と、記録が残る仕組み
- 削除の依頼を受けた場合の手順が決まっているか
- 外部サービスへ提供している情報の範囲を把握しているか
5. 品質と運用の状態
完璧な状態は求められていません。壊れやすい箇所を把握しているか、壊れたときに気づける仕組みがあるかが確認されます。監視や自動テストは、全体を網羅するのではなく、止まると事業に影響する箇所から用意されているかを見ます。
- 障害に気づく仕組み(監視・通知)があるか、誰に届くか
- 自動テストがある範囲と、意図的に対象外にしている範囲
- 本番へ反映する手順が記録され、特定の一人に依存していないか
- バックアップがあり、実際に戻せることを確認した記録があるか
- 既知の不具合や未対応の課題を一覧にしているか
6. 質問への答え方
調査では、その場で答えられない質問が出るものです。推測で答えたり、実態より良く見せたりすると、後の確認で食い違いが生じ、信頼を損ないます。分からないことは分からないと伝え、いつまでに確認するかを添えるのが基本です。
- 分からない質問には「確認して◯日までに回答します」と答える
- 問題を指摘されたら、認識の有無と対処の方針を答える
- 資料と口頭の説明が食い違わないよう、事前に関係者で読み合わせる
- 回答した内容を記録に残し、後の質問との整合を保つ
7. 指摘を受けた後の進め方
調査の結果として、改善項目が条件に付くことがあります。すべてを同時に対応しようとすると事業が止まるため、期限が定められているもの、事業の継続に関わるもの、それ以外の3つに分けて順番を決めます。対応状況を定期的に共有すると、関係が安定します。
- 指摘事項を一覧にし、期限の有無で分類する
- 対応の担当者と完了予定日を決める
- 対応の進捗を共有する頻度と方法を合意する
- 対応しないと決めた項目は、その理由を記録しておく
ご注意
この資料は一般的な情報をまとめたものであり、実際の調査で確認される項目は、投資家や買い手、業種、取り扱う情報の性質によって異なります。契約、個人情報の取り扱い、業界ごとの規制に関わる判断は、個別の事案ごとに弁護士や各分野の専門家にご確認ください。
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監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開