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    自社のAI活用の準備度を測る

    AI活用に着手できる状態かを、データの所在・業務の文書化度合い・意思決定の速さの三点で確認する方法と、準備が足りない場合に先に整えるべきものを経営者・事業責任者向けに整理します。

    AI活用6分で読めます

    この記事の結論

    • 見るべきはデータの所在・業務の文書化度合い・意思決定の速さの三点です
    • 三点のうち意思決定の速さが最も効き、ここが遅いと他が揃っても進みません
    • 準備不足の項目があっても、範囲を狭めれば着手できる場合があります

    AI活用を検討する際、「自社はまだ早いのではないか」という懸念はよく聞かれます。一方で、準備が整うのを待っているうちに何も始まらない、という状態も同じくらいよく見られます。

    判断の材料になるのは三つの観点です。データの所在、業務の文書化度合い、そして意思決定の速さ。本記事では、それぞれをどう確認し、足りない場合に何を先に整えるべきかを整理します。

    一点目:データの所在

    AIに何かをさせるには、何かを渡す必要があります。渡すものがどこにあるか答えられるかどうかが、最初の確認です。

    確認する問いは次の通りです。

    • 対象の業務で使う情報は、どこに保存されているか
    • それは人が開いて読める形か、システムの中に入っているか
    • 必要なときに取り出せるか。取り出すのに誰の許可が要るか
    • 紙のまま残っているものはどれくらいあるか

    ここで多くの企業が該当するのは、「複数の場所に分かれている」という状態です。一部は共有フォルダ、一部は基幹システム、一部は担当者のメールの中。この状態自体は珍しくなく、直ちに問題にはなりません。

    問題になるのは、「どこにあるか誰も答えられない」場合です。この状態で開発に進むと、要件定義の段階で止まります。まずは対象を一つの工程に絞り、その工程で使う情報だけを特定してください。全社のデータを整備する必要はありません。

    なお、紙のまま残っている情報が中心の業務は、AI活用の前に電子化の検討が先です。読み取りの工程を挟むと、精度と費用の両方で不確実性が増えます。既存システムからのデータの移行についてはデータ移行の考え方も関わってきます。

    二点目:業務の文書化度合い

    AIに指示を出すには、業務の手順を言葉にする必要があります。つまり、AI活用の準備とは、業務を説明できる状態にすることとほぼ同義です。

    確認する問いは次の通りです。

    • その業務の手順は、文書として残っているか
    • 残っていない場合、担当者は口頭で説明できるか
    • 例外的な処理はどれくらいあるか。それを列挙できるか
    • 担当者によって処理の仕方が違う箇所はあるか

    三つ目と四つ目が重要です。文書がなくても、担当者が説明できるなら着手できます。しかし、例外が多く、しかも担当者ごとに判断が違う業務は、AI活用の前に業務の整理が必要です。整理せずにAIに任せると、誰の判断基準に合わせればよいか決まらず、出力の良し悪しも判断できません。

    逆に言えば、この確認の過程で業務の整理が進むこと自体に価値があります。AI活用の検討が、業務の棚卸しのきっかけになる例は多くあります。

    想定例:ある企業が、見積書の作成をAIで支援しようとした場面を考えます。手順を書き出す過程で、担当者ごとに値引きの判断が異なることが分かりました。この企業はAIの検討を一度止め、値引きの基準を明文化する作業を先に行いました。結果として、基準の明文化だけで見積書作成の時間は短くなり、AIの導入はその後に小さい範囲で始めています。

    三点目:意思決定の速さ

    三つの中で最も効くのがこの観点です。データと文書が揃っていても、判断が遅い組織ではAI活用は進みません。

    理由は、AI活用が試行錯誤の積み重ねだからです。試す、結果を見る、やり方を変える、また試す。この繰り返しの速度が、成果が出るまでの期間を決めます。一回の判断に稟議を要し、数週間かかる組織では、数回の試行に半年を費やします。その間にAIサービス自体が変わり、前提が変わります。

    確認する問いは次の通りです。

    • 数万円規模のツールを試すのに、何人の承認が必要か。何日かかるか
    • 「やってみて、だめならやめる」という進め方が許される文化があるか
    • 効果が出なかったときに、担当者が責められる組織になっていないか
    • やめる判断を、担当者の判断でできるか

    四つ目が特に重要です。やめる判断ができない組織では、効果のない取り組みが続き、次の試行に進めません。AI活用で成果を出す組織の特徴は、当たりを引く確率が高いことではなく、外れを早く手放せることです。

    この観点で問題がある場合、対象を狭めても解決しません。先に、少額の試行を担当者の裁量で行える仕組みを作ってください。金額の上限を決め、その範囲内なら報告のみで試せる形にするだけで、進み方は大きく変わります。

    三点の組み合わせで判断する

    三つの観点を整理すると、次のようになります。

    観点準備できている状態足りない場合に先にやること
    データの所在対象業務で使う情報の場所を答えられる対象を一工程に絞り、その範囲だけ特定する
    業務の文書化手順と例外を担当者が説明できる判断基準のばらつきを先に整理する
    意思決定の速さ少額の試行を担当者の裁量で行える試行の裁量範囲を金額で決める

    三つすべてが揃っている必要はありません。ただし、意思決定の速さだけは、他の二つでは補えません。ここが遅い組織は、データが整い業務が文書化されていても、AI活用が進まない例が多くあります。

    逆に、データが散在していて文書化も進んでいなくても、意思決定が速い組織は進みます。試しながら足りないものを特定し、その都度整えていけるためです。

    準備が足りなくても、狭めれば始められる

    準備度が低いと判断した場合でも、着手を諦める必要はありません。制約に応じて対象を狭めれば、多くの場合は何かしら試せます。

    データが散在している場合は、データを必要としない工程を選んでください。文章を読んで文章を書く工程なら、目の前の資料だけで完結します。最初の対象の選び方はAI活用、最初の一歩をどう決めるかで整理しています。

    文書化が進んでいない場合は、担当者一人が自分の業務で試す範囲から始めてください。自分の業務なら、手順は頭の中にあります。その担当者が指示文を書く過程で、結果的に業務が言語化されます。

    ただし、対象を狭めても向かない業務はあります。AIを使わない方がいい業務で挙げた類型に該当しないかは、先に確認してください。

    準備度は測って終わりではない

    準備度の確認は、始めるかどうかを決めるためだけのものではありません。半年後に同じ三点を確認すると、変化が分かります。データの所在が明確になった、例外が列挙できるようになった、試す判断が速くなった。こうした変化は、AI活用そのものの成果と同じくらい、事業にとって意味があります。

    体制を決める段階に進む場合はAI活用は誰が担当すべきかを、着手後の進め方はAI活用の最初の90日にやることをご覧ください。

    弊社のAI活用開発では、着手前の状況の整理からご相談を受けています。現時点では着手を急がないほうがよいと判断した場合は、その旨をお伝えします。お問い合わせからご連絡ください。打ち合わせはオンラインで全国に対応し、ご相談・お見積りは無料です。返信は通常1営業日以内にいたします。

    チェックリスト

    • 対象業務のデータがどこにあるか答えられるか
    • そのデータを取り出せる状態か確認したか
    • 業務の手順が口頭伝承になっていないか確認したか
    • 例外的な処理が書き出せるか確認したか
    • 試す許可を誰が出すか決まっているか
    • やめる判断を誰がするか決まっているか

    よくあるご質問

    三点すべてが揃っていないと始められませんか?

    揃っていなくても始められます。ただし、足りない項目に応じて対象を狭めてください。データが散在していれば、データを必要としない工程から。文書化が進んでいなければ、担当者一人が自分の業務で試す範囲から。意思決定が遅い場合だけは、対象を狭めても解決しないため、先に手当てが必要です。

    データを整理してからAIに着手すべきですか?

    整理そのものを目的にすると、いつまでも着手できません。対象を一つの工程に絞れば、必要なデータも限られます。その範囲だけ整理し、効果が確認できてから範囲を広げるほうが現実的です。全社のデータ整備を先に完了させる必要はありません。

    準備度が低いと分かった場合、何から手をつけますか?

    意思決定の速さが低い場合はそこから。他の二つが低い場合は、その制約を受けない範囲で一つ試してみることをおすすめします。試す過程で、何が足りないかが具体的に分かります。机上で準備度を高めようとするより速く進みます。

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    監修: フィリット・コンサルティング株式会社公開

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